尿管結石・尿路結石について
腎臓で作られた尿は、尿管、膀胱、尿道を通って排出されます。この尿の通り道が尿路です。尿路結石は尿路のどこに結石があるかによって、腎臓結石、尿管結石、膀胱結石、尿道結石に分けられます。尿路の中でも腎臓と膀胱をつなぐ尿管は細長く、途中にくびれて細くなっている部分があるため、結石が詰まって激しい痛みを起こします。さらに腎機能障害につながる可能性がありますので、早期発見と治療が重要です。
以前は中年以降の男性に発症が多かったのですが、現在は女性や若い男性の発症も増加傾向にあります。食生活をはじめとした生活習慣や特定の疾患があると再発しやすいため、原因を見極めた適切な治療を受けましょう。
尿路結石の症状
尿路結石(腎臓結石・尿管結石・膀胱結石・尿道結石)の主な症状
- 血尿
- 腰痛
- 背中の違和感や痛み
- 腹部・背中・わき腹の痛み など
血尿は他の深刻な泌尿器疾患も疑われる症状です。血尿以外は腸など消化器疾患やぎっくり腰など整形外科疾患でも生じることがあり、背中の痛みは心筋梗塞で起こっている可能性もあります。早急に適切な処置が必要な場合もありますので、早めに医療機関を受診してください
尿管結石の症状
わき腹から下腹部に突然、激しい痛みが起こることが多く、血尿、激しい腰痛、吐き気や嘔吐、顔面蒼白、陰部の痛みなどを生じることもあります。
安静にしていても痛みがおさまらず、結石が移動するに従って痛みの位置や強さが変わります。尿管は細長く、さらに途中でくびれて細くなっている部分があるため、その位置に結石が詰まりやすくなっています。
こうした痛みは数日で改善することもありますが、数十日続くこともあります。強い痛みがある場合は我慢せずに泌尿器科を受診して、痛みを緩和させる治療を受けてください。
尿路結石の原因
尿に含まれるカルシウム、マグネシウム、尿酸などが結晶化したものが尿路結石です。シュウ酸カルシウムの結石が多く、遺伝的な要因に生活習慣が関与して発症すると考えられていますが、はっきりとした原因はよくわかっていません。また、疾患や治療薬の影響で発症するケースもあります。
結石になりやすい生活習慣
- 水分摂取量の不足
- 汗かき
- 運動不足
- 過食
- 肉類の摂取が多いといった偏食
- 塩分や糖分の過剰摂取
- 尿の停滞や濃縮
- ストレス など
治療、入院などによる結石リスク
- ステロイドによる治療を受けている
- 入院や寝たきりなどで尿が停滞している
結石になりやすい病気
- 尿管狭窄・前立腺肥大などの泌尿器疾患
- 骨粗鬆症
- 脂質異常症(高脂血症)
- クッシング症候群
- 高カルシウム血症
- シスチン代謝異常
- 原発性副甲状腺機能亢進
- 炎症性腸疾患
(潰瘍性大腸炎・クローン病など) など
結石の発症や再発予防
結石は治療後に再発をすることが多く、5年以内に約50%の方が再発すると言われています。生活習慣の改善を続けることが再発防止には不可欠です。また、結石を大きくしないということも大切です。また、結石が小さければ尿管の細い部分にも引っかからずに自然に排出されます。
当院では結石の再発予防に力を入れており適切な食事指導と水分摂取の指導を行っております。治療後も定期的に外来通院をおすすめしています。また排石した結石をお持ちになっていただければ結石の分析を行い再発予防の戦略をたてることが可能です。
水分摂取
カフェインや糖分を含まない水分を、1日2L以上摂取しましょう。特に汗で体内の水分が不足しやすい夏にはこまめな水分補給が必要です。また結石は就寝中にできやすい傾向がありますので、就寝前には必ず水分をしっかりとってください。
食事
塩分や糖分を控え、脂肪もとり過ぎに注意してください。食物繊維をしっかりとり、バランスのとれた食事をすることが重要です。結石ができやすそうなイメージがあるカルシウムなどのミネラルを控えてしまうケースがありますが、これは逆効果であり、健康にも害があります。結石ができやすい下記の食品の摂取を控えめにしましょう。
結石ができやすい食品
- ホウレンソウ
- コーヒー
- 紅茶
- チョコレート
- ビール
- レバー など
尿管結石・尿路結石の検査と診断
症状の内容や起こりはじめた時期、変化、既往症の有無やその内容、服用されている薬などについて問診でうかがいます。結石の位置、大きさ、腎臓の状態などを確認して診断します。
結石の状態についてくわしくお伝えして、可能な治療のメリットやデメリット、リスクなどをわかりやすくご説明します。治療方針は患者さんと相談しながら決めますので、気になることがあれば些細なことでもご質問ください。
触診
圧痛や叩打痛などの有無や位置を確認します。
尿検査
尿に血液が混じっていないかを調べる尿潜血検査を行います。肉眼ではわからない微量の血尿がある場合でも、採取した尿を顕微鏡で観察して赤血球の有無を調べることで確認できます。
血液検査
血液を採取して腎臓機能に異常がないかを確かめます。尿素窒素、クレアチニン、尿酸、カルシウム、リンなどを調べます。
腹部X線検査
尿路結石の大部分はシュウ酸カルシウムであり、X線検査による腎尿管膀胱単純撮影で存在を確認できます。腎臓から膀胱までの結石の有無や位置、サイズなどを確認するために有効な検査です。
超音波(エコー)検査
腎臓や尿管の状態を確認するために行われます。結石に関しては位置などによって発見できない場合もあります。
CT検査
X線検査や超音波検査では写りにくい結石や骨と重なって見えない結石はCTではほとんどわかります。
尿管結石・尿路結石の治療
自然排出可能なサイズの結石の場合には、薬物療法と経過観察を行います。尿の流れ阻害するほど大きく、腎臓機能障害につながる可能性がある場合には、結石を砕く砕石治療が必要になります。
基本的に結石の大きさで治療法が変わりますが、結石の位置などによって適した治療法が変わる場合もあります。
5mm以下の結石
痛みを緩和する薬、尿管のけいれんを鎮める薬、尿管を拡張する薬、尿を出しやすくするα1受容体遮断薬などを処方します。水分をしっかりとって適度な運動を行い、自然排出を促します。
5mm~1cmの結石
薬物療法による経過観察と砕石治療のどちらが適切かを慎重に見極めて治療します。結石の位置、症状、尿管や腎臓の状態、体調や基礎疾患の有無などを考慮し、治療方法を選択します。
1cm以上の結石
砕石治療が必要な状態です。砕石治療には、細かく砕いて自然排出を待つ治療と、結石を取り除く治療があります。
砕石治療と手術
経尿道的尿管砕石術(TUL)
内視鏡を使って結石を砕き、取り除く治療法です。尿道から極細の内視鏡スコープを挿入し、スコープ先端のレーザーで結石を砕き除去します。腎臓から膀胱までの尿の流れを確保するために、尿管ステントを留置することもあります。ステントを留置した場合、抜去までの約2週間は排尿痛や血尿の症状が続きます。
経皮的腎砕石術(PNL)
皮膚に開けた穴から腎臓まで内視鏡スコープを挿入して、結石を砕き除去する方法です。大きな腎臓結石がある場合に行われます。
体外衝撃波結石破砕術(ESWL)
体の外から衝撃波を当てることで結石を細かく砕く治療法です。砕かれた結石は自然排出されます。麻酔を使わない治療ができるため、幅広い方の治療が可能ですが、結石の大きさなどによりこの治療ができない場合もあります。
※手術が必要な場合は、患者さんと相談の上で提携している医療機関をご紹介し、スムーズに治療を受けられるように努めます。